来年(2020年)4月より岐阜で本格的に取り組まれようとしている「勤務の割振り」は、もともと文部省(当時)が示していた「教育公務員は、勤務時間の割振り等により、原則として、時間外勤務が生じないようにする必要があり、勤務時間外に業務を命ずる時には、超勤4項目について臨時又は緊急のやむをえない場合に限られている」という規定にもとづいて、多くの他県では以前から運用されていたものです。
今回、県教委が示している「勤務の割振り」は、以下の3種類があります。
3.は、今政府がすすめようとしている「一年単位」と同じ「変形労働時間制」という用語を使いますので、しばしば混同されます。この「1か月単位」は、以前から地方公務員には適用されていたもので、県教委は「勤務の割振り」の一つとして位置づけています。
「1か月単位の変形労働制」での「勤務の割振り」は、勤務時間が1日7時間45分であることを前提に、例えばある教員がある日に19時まで2時間の時間外勤務をした場合、その「割振り」として別の日の勤務時間は15時までとする、という制度です。その「割振り」の期間が「1か月」以内ということです。(月が異なってもかまいません)
現行の給特法第6条では「教育職員の健康と福祉を害することとならないよう十分な配慮」をすることが求められていて、そのために割振りをしなければいけないとされているのですが、疲労を回復し健康を維持するためには、できるだけ超過勤務が発生した日と近い方が良いと考えられます。よって、「1か月以内に割振り」をおこなうことは妥当であると考えられます。「どうせ割振りをしても書類上のことになって、仕事があれば割振りした日も勤務時間は変わらないことになるだろう」という声も聞こえてきますが、少しでも「割振り」を進めることで、勤務時間への意識が高まり、学校内で当たり前に「使える」制度にしていくことが今後の課題となります。
また、「割振り」には法的には管理職が命じるという形をとりますが、個々の教職員の勤務状況にあわせて適用される制度となっていることがとても大切です。運用にあたっては、できるだけ個々の教職員の方から管理職に申請して認められるというしくみになることが望まれます。
一方、「1年単位の変形労働時間制」は、前提の勤務時間を1日7時間45分ではなく、一部の期間は8時間45分または9時間45分、一部の期間は6時間45分または5時間45分を所定の勤務時間※とすることになっています。これは、事情のある教職員の例外を認めるにしても、原則として学校の教職員に対して一律に規定されるものです。したがって、勤務時間が伸ばされた期間に17時に帰るには、年休を取らなければならなくなってしまいます。
給特法「改正」案では、第7条を追加し、「教育職員の健康及び福祉の確保を図る」ことについて規定していますが、「繁忙期」として4月5月の勤務時間を延長させた場合の疲労回復は、3~4か月後の夏休みまで待て、ということになりかねません。これでは教職員のいのちと健康を大きく損なうことになりかねません。また、疲れを引きずったままの心身に余裕のない教職員が多数となることの結果として、子どもたちに豊かできめ細かい教育がなされなくなる可能性も高まります。
労働基準法では「1年単位の変形労働時間制」を導入する場合、1日10時間を限度としています。教職員の平日の平均勤務時間が11時間という現状のまま導入すれば、「1年単位の変形労働時間制」さえ守られないことは明白です。政府・文科省が取り組むべきは、「1年単位の変形労働時間制」導入ではなく、時間外勤務をなくすこと、そのために教職員を増やし、一人当たりの業務を削減することです。
公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令(平成十五年政令第四百八十四号)