もう50年も前だが、バスの定期券を買いに行った時のこと。教室ほどの広さの売り場がごった返している中、目の見えない二人の方が手を取り合い窓口を探していた。多数の人の中に通り道はできたが、いつまでも窓口にたどり着かない二人に声をかける人はいなかった。避けていただけだ。小学生だった私は世間とその一人である自分自身の冷たさに心を痛めたのを覚えている▼パラリンピックが終わり、何が残されたのだろう。最も成功したとされるロンドン大会の後でさえ、イギリス社会にはほとんど変化がなかったという。ましてや「飽きやすい」「忘れっぽい」国民性の日本ではどうだろう。「障がい者なのにすごい」という「感動」だけでは、「人に迷惑をかけない」文化の中で引け目を感じて生きている人々に対する意識は変わらない▼コロナ禍で明らかとなった「耳を貸さず説明もしない暴走するリーダー」「あいまいな責任」「耐え忍ぶ国民」「十分な手を差し伸べられない弱者」の背景には、かつての戦争の要因にもなった国民性がある▼1947教育基本法の前文には「理想の実現は、基本において教育の力にまつべきものである」とある。よりよい社会を実現できる子どもたちを育てたい。
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