ほんりゅう 2020年12月20日(長谷川)

昔、尊敬する故日野泰圓先生の講演で、とても大変なクラスを担任されていた時の話を聞いた。イスを振り上げて来ることもあった問題行動の多いクラスの生徒が逮捕された際、「空き巣に入るにしても、よりによってなぜ自宅の向かいの家にわざわざ入ったんだ」と聞くと、その生徒はやっとの思いで衝撃の告白をした。その夜、母に逃げられた父が妹を犯すのが耐えられなくて家を出てすぐのことだった…。性的虐待という言葉が生まれるずっと前のことだ。先生は、「教員は生徒のことを知らない」「教員は無力だ」と言った▼自分がかつて担任した生徒は、声をかけてきた大人についていっては関係を持つことを繰り返していた。1年かけて彼女が私に伝えたことは、中学時代の性被害のトラウマだった▼先日、病気や介護で学習や就職の機会が奪われている子供たち(ヤングケアラー)の報道があった。私たち教員には見えていない生徒の現実や、見えてもどうしようもない現実がある。私たち組合が求める「教育条件整備」は、単にクラス人数を少なくすることだけではない。自助・共助・公助のどれからもこぼれ落ちた子どもたちを救う政治と予算を求めている▼新型コロナの感染の収束が見えない中、今後ますます貧困・虐待・その他様々な状況に苦しむ子どもたちが増えてくると思われる。教職員は政治から距離をとってはいけないと思う。

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