【緊急アピール】「20人学級」を展望した少人数学級を実現しよう

7月3日、全教は「【緊急アピール】子どもたちの成長・発達を保障し、いのちと健康を守るため、「20人学級」を展望した少人数学級を実現しよう」を発表しました。


【緊急アピール】子どもたちの成長・発達を保障し、いのちと健康を守るため、「20人学級」を展望した少人数学級を実現しよう

2020年7月 全日本教職員組合

新型コロナウイルス感染拡大が収束しない状況のもと、全国各地で学校が再開されました。臨時休業中には子どもたちの身体的距離を確保するために各学校で分散登校の工夫などが行われましたが、再開後は徐々に「コロナ」以前の「密な」教室(=40人学級)に戻されつつあります。保護者や教職員は「密な」教室環境が子どもたちのいのちと健康に影響を及ぼすことに強い不安を抱いています。今後、いつどこで感染が拡大するかまったくわからない中で、40人学級に戻すことは大変危険なことと言わざるを得ません。

しかも、再開した学校の多くでは臨時休業の分を急いで取り返そうとして、子どもたちや教職員に無理を強いています。土曜授業や平日7時間授業、行事の縮小・中止、夏休みの縮減などの計画が矢継ぎ早に打ち出され、子どもたちや教職員の息苦しさを増大させています。「これから暑い夏にマスクをして、友だちと距離を保って、急いでたくさん勉強する。考えただけで息が苦しくなり、学校に行くのがつらいと感じます。僕たちはロボットではありません」(福岡県・小6)などの声も上がっています。学びを保障することは大事なことですが、授業時数や日数を機械的に確保すればよいというものではありません。教科の学習と同じように行事や特別活動には学校教育の中で重要な意義があります。行事や特別活動を削って授業ばかりを詰め込むことは、子どもたちの成長・発達に悪影響を及ぼし、学力保障も十分に行えないおそれがあります。本当に学力保障を行うには少人数授業・学級をすすめることこそが最善の道です。

臨時休業中や学校再開への移行期間には、時差登校や分散登校など、教室に入る子どもの数を2分の1以下にする措置がとられました。そのとき、「いつもより勉強がよくわかった」「手を上げやすかった」「先生に話しやすかった」など、少人数での授業を肯定的に受け止める声が子どもたちから聞かれました。一方で、学校が再開され40人学級に戻された学校からは「学校の新しい生活様式」(文部科学省2020.6.16 Ver.2)が求められ、「学校がつまらない」「学校に行きたくない」という子どもたちが増えています。教職員からは、40人に戻ったら2分の1以下で授業したときに感じた気持ちのゆとりがなくなった、子ども一人ひとりとていねいにかかわることや子どもたちに寄り添うことが難しくなったなど、悲痛な声が聞かれました。そもそも40人ではゆきとどいた教育を行うことに無理があったにもかかわらず、無理に無理を重ねてやってきたことが「コロナ」によって明らかになったといえます。これまで国は財政上の理由から少人数学級の前進に背を向けてきました。しかし、少人数での授業や少人数学級は、子どもたちにゆきとどいた教育を行うための重要な教育条件です。今、「コロナ」から子どもたちを守ると同時に、教育条件整備をすすめる契機が訪れていると考えるべきです。今後は「20人学級」を展望した少人数学級の実現が求められています。

これまで全教は、義務・高校標準法を改正し、学級編制標準を40人から段階的に少人数に引き下げ、抜本的な教職員定数改善を行うよう国に求めてきました。当面、緊急に少人数での授業を可能とする教職員の拡充と配置を行い、空き教室や空き校舎を積極的に活用し子どもたちの分散を図り身体的距離の確保を行うことが求められます。特に、特別支援学校・学級の過大・過密状況は感染リスクの高い障害児にとって命にかかわる重大な問題となるため速やかな対応が必要です。こうしたとりくみに加え、現在すすめられている学校統廃合計画をいったん凍結することも必要です。

すべての父母・保護者、教職員、国民のみなさん

「コロナ」をめぐり、社会のあり方が問われています。新自由主義にもとづく効率優先政策の破綻があきらかになり、学校教育においても「あまりにも競争的な制度」(国連子どもの権利委員会の日本政府への勧告)と指摘される競争主義的な教育政策が子どもや保護者、教職員を苦しめています。経済格差による教育格差も顕在化し社会問題となる中で、「コロナ」によって社会全体の歪みがいっそうくっきり見えてきました。その中で子どもたちと学校・地域を守るために、公教育の市場化・民営化をすすめるのではなく、国が教育予算を大幅に増やし、国の責任でゆとりある教育をすすめるための少人数学級実現をはじめとする教育条件整備をすすめることが求められています。

 

全教は、子どもたちの成長発達を保障し、いのちと健康を守る教育を実現するために、力を合わせて「20人学級」を展望した少人数学級をすすめることを心から呼びかけます。

以上