協力・共同の学校づくりを

昨年10月に全国的に報道された神戸市の教員「いじめ」に対して兵庫教職員組合は声明を出し、次のことを指摘しています。

 

  1. 成績主義・効率主義・過度な競争主義のもと、指導の不十分さが攻撃の材料になり、未熟さが「自己責任」にされてしまっている
  2. 常態化する教職員の長時間過密労働と多忙化は過度なストレス状態を強いることになり、そのはけ口として「いじめ」や「攻撃」が繰り返されたといえる
  3. いじめ行為を「職員間の人間関係」に矮小化した管理職の危機管理・人権感覚の希薄さ
  4. 指揮命令・上意下達の体制により、民主的な学校運営が侵され、「何かおかしい」と感じながらも声に出せない状態になっていた

 

この後、神戸市教育委員会は職員の分限・懲戒に関する条例を改正し、加害教諭4人を分限休職処分としました。今年に入り、業務削減の方策を打ち出す一方、民間企業研修の試験的導入や、自主的な研修・研究活動を教育委員会が主導するなど、研修の在り方を大幅に見直すことを発表しました。

しかし、教職員を管理統制する方向ではなく、その背景に向き合うことこそが求められています。これは岐阜県も含めて全国的な共通課題となっています。

 

以下に、兵庫教職員組合の許可を得て、転載いたします。


互いのよさを尊重し、ぬくもりが通い合う学校、

真に子どもたちや保護者から信頼される学校づくりをすすめます

-神戸 東須磨小学校の教諭いじめ事件に関わって-

 

はじめに

 

子どもたちに「互いの違いを尊重し、共に生きていくことの大切さ」を教えはぐくむ学校で起こった複数の教諭による特定の教諭に対するいじめ事件。あってはならない言語道断の事件で、私たちは断じて許すことができません。この事件が起きた東須磨小学校に在籍するすべての子どもたちのことを考えると、私たちは、兵庫県・神戸市の教育に直接責任を負う教職員組合として、痛恨の思いを抱いています。

この事件に心を痛める市民・県民の皆さんから、「なぜ学校で、こうした事態が起きたのか」「一体学校はどうなっているのか」などの厳しい声もいただいています。二度とこのような事態が起きないように、私たちは、もう一度教育の原点に立ち返り、互いの良さを尊重し、ぬくもりが通い合う学校、真に子どもたちや保護者から信頼される学校づくりをすすめていくことをよびかけます。

 

1.学校は本来、いろんな先生がいて互いに協力・共同しあいながら、全職員で教育を進めるところ

今、私たちは、「子どもをどうみるか」だけでなく、共に教育の営みを行っていく仲間としての「同僚をどうみるか」が、厳しく問われています。

今度の事件の加害教諭は、そんな同僚としての教職員をどうみていたのでしょうか。若い同僚に対して、教師としての「不完全さ」や「未熟さ」に対する思いやりはあったのでしょうか。

学校には多様な教職員がいます。年齢や性別・性格だけでなく、得意とする教科も、教え方も、子どもとの接し方まで、一人ひとり違います。同時にそれぞれの教職員は、教師として人間として「完全」ではありません。それぞれの個性を認め尊重し、互いに協力して、教育にあたっているのです。そんなぬくもりのある集団の中でこそ、子どもたちの育つ豊かな教育活動は生まれます。

 

2.このような問題が起こった背景に何があるのでしょうか

なぜ今回のような事件が起きてしまったのでしょう。職場の仲間を共に教育を営む「同僚」として尊重することができず、集団でいじめを起こしてしまったその背景には、次のようなことが考えられるのではないでしょうか。

第1は、成績主義・効率主義・過度な競争主義です。今、学校は、人事評価や学校評価で追い詰められ、息苦しくなっています。成績主義・効率主義の下では、指導の不十分さが攻撃の材料になり、未熟さが「自己責任」にされてしまいます。また、全国学力テスト等に振り回される教育委員会や学校現場には、“教育の条理”が弱くなっているのではないでしょうか。

第2は、常態化する教職員の長時間過密労働と多忙化です。教職員間で人間らしいコミュニケーションの時間が奪われ、過度なストレス状態になり、そのはけ口として「いじめ」や「攻撃」が繰り返されていたのではないでしょうか。

第3は、危機管理と人権感覚の希薄な管理職の責任です。今度の事件では、いじめ行為を「職員間の人間関係」に矮小化し、「再三指導した」と言いますが、それで済ませる人権感覚を疑わざるを得ません。一人ひとりの教職員に寄り添い、その教育活動を温かく見守り励ましていたのでしょうか。

第4は、教育の独立性に介入する市長による「総合教育会議」等で強まる指揮命令・上意下達の体制です。民主的な学校運営が侵されていくと、自由に物が言えぬようになり、「何かおかしい」と感じながらも声に出せない状態になっていたのではないでしょうか。

 

3.兵庫教組はよびかけます

学校は、子どもたちの成長、発達を保障する場です。一人ひとりの教職員は、目の前の子どもたちの実態から出発し、子どもたちの成長と発達を保障するために、日々奮闘しています。子どもたちが「できた」「わかった」という時に見せてくれる笑顔や「もっとできるようになりたい」という願いを受けとめ大切にする、そんな本来の学校であるために、わたしたちはよびかけます。

悩みや困難があれば、一人で抱え込まず、周りの仲間を信頼し相談しましょう。その解決のために、みんなで知恵を出し合いましょう。

子どものいのちを守り、人間として大切にされる学校づくりをすすめていくために、職場の仲間を「同僚」として尊重し、率直に語り合う共同のとりくみをすすめていきましょう。

管理職には、「民主的な学校」「子どもと教職員が生き生きと学び育ち合う学校」づくりのために、職場のリーダーとして、その責任を果たすことを求めます。

教育委員会には、学校が教育の営みを豊かに創り上げていくうえで大切な教育条件整備に力を入れることを強く求めます。また今度の問題の原因・背景などを調査・分析し、一日も早く学校が正常化できるよう全力で支援していくよう求めます。

 

私たちは、職場での共同のとりくみをすすめ、互いのよさを尊重し、ぬくもりが通い合う学校、真に子どもたちや保護者から信頼される学校づくりのために全力を尽くします。

 

2019年10月22日

兵庫教職員組合第25回常任執行委員会