2019年10月31日
岐阜県教職員組合
書記長 長澤誠
2020年度からはじまる大学入学共通テストでは、英語に民間資格・検定試験の成績を活用できることになっています。そのための「大学入試英語成績提供システム」の「共通ID」の申し込みが、11月1日から始まります。
しかし、10月24日に萩生田光一文部科学大臣がテレビ番組で「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」と述べて以来、マスコミでも連日取り上げられ、「教育基本法にある教育の機会均等を理解しているのか」「格差を是認するのか」との批判の声が大きくなっています。また、この制度そのものの問題点が社会的に大きな関心を集めるようになりました。萩生田大臣は10月1日にも「初年度は精度向上期間」とも述べており、教育行政のトップがこの制度そのものに今なお欠陥があることを認めています。また、不安を抱えて大学入試に臨む受験生や、保護者・教員・大学関係者の気持ちを全く理解していません。
英語民間検定試験の活用については、これまでも各方面から不安・不満・疑問の声が上がってきました。この民間試験の活用は、以下のような解決すべき課題が山積しています。
- 経済格差によって不公平が生じる
- 地域格差によって不公平が生じる
- 民間試験を大学入試に活用する際に求められる公正さが不十分である
- 高校の教育課程での整合性がとれていない
- 準備不足であり時期尚早である
- 利用しない大学もあり、高校での進路指導を不安・混乱に陥れる
- 大きな利権を生み、そのために高校教育がゆがめられる
高校生・保護者・高校教員・大学教員など、大学入学共通テストの関係者の多くが不安を抱え、延期や廃止を望んでいます。全国高等学校長協会は、開始の延期と制度見直しを求めて、2度に及ぶ極めて異例の要望をおこないました。私たち岐阜教組も、この制度の問題点を指摘し、「令和3年度大学入学者選抜に係る大学入試英語成績提供」の中止を求める署名に取り組んできました。
全国の高等学校の教員は、とまどう高校生・保護者に適切なアドバイスや指導を責任もっておこなえない不安を抱えています。英語の教員は、民間試験で求められる技能の習得が試験ごとに異なり、しかも学習指導要領の範囲を超えるため、教材もなく、そのための技能を獲得する研修等も実施されないまま指導が求められています。
小中学校の教員も、ますます過熱する保護者の英語塾通いに不安を抱いています。「学ぶことの楽しさ」が失われ、「入試のための英語学習」となることに危惧を抱いています。同時に、各家庭での経済格差が教育格差にますます繋がることに心を痛めつつ、すこしでも格差が広がらないように努力しています。
以上の点から、岐阜県教職員組合は、多くの問題点を抱えている大学入学共通テストでの英語の民間試験の活用に対して強く反対を表明し、その中止を求めます。