ほんりゅう 感謝の気持ち(長谷川)

母の誕生日は2月11日、当然毎年休日である。ところが母は、誕生日にいつも朝から家にいないので、寂しかった姉が母に理由を聞くと、「誕生日は自分を産んでくれたことに感謝する日だから、実家の手伝いに行くことにしている」と言ったそうだ。母は、農家の6人兄弟の四女で、自分だけが高等教育(師範学校)に進学させてもらえた事への感謝もあったのだろう。そんな母に対し、思春期ごろからよく反発してきた自分は、母の様にしてこなかったことを今になって恥じる。いつまでも、「誕生日は祝ってもらう日」という感覚が抜けなかった。しかし母は、そんな自分に何も言うことなく亡くなった。感謝を伝えることがもうできない▼「しつけ」と称する虐待事件が後を絶たない。本当に心が痛む。虐待を受けながら大人となった方々は「親とは二度と会いたくない」「縁を切りたい」「感謝なんかできるわけがない」と言う。心に傷を負い、「人生に明るい未来は見えづらい」「自分が親になるのは怖い」という▼「感謝の気持ち」は教えられる事なんだろうかと思う。親や教師が「感謝」を教えようとする時、感謝すべきとする相手と子どもたちがどんな関係なのか知らない事が多い。卒業式や1/2成人式などを迎えるにあたって、感謝したくない子どもたち、感謝の気持ちが生まれようがない事情の子どもたちの心も大切にしたいと思う。