【特集】「働き方改革」で職場の多忙は改善されたのか?

2018年度組合連勤務実態調査から

 組合連の「勤務実態調査」は14年目となった。この間、教職員の異常な勤務実態を明らかにし、公表してきた。県教委も昨年「教職員の働き方改革プラン」を発出し、本格的な働き方の改善に動き出した。

 組合連の調査は昨年度から出退勤を記録する調査に変更し、よりリアルな教職員の働き方が見えてきた。今号では、昨年度との比較を元に考察をしたい。

●回答者数 1403名 

●実施時期 6月11日(月)~17日(日)一週間


正確な記録・勤務時間短縮の検討は進んだが…

 調査の中で行ったアンケートによれば、昨年度と比べて「勤務時間の記録」について「正確にしている」「ある程度している」が85%→91%、「勤務時間短縮の指導・検討」は「検討した」「検討中」が75%→83%となっており、職場での取組はかなり進んでいる結果となった。

 

 では実際の勤務時間はどうだろうか。出勤時刻を見ると、ピークは朝7時~8時に集中しているが、中には5時台に出勤をする職員もいる。退勤時刻は17時台から徐々に増え、分散傾向にあるが、21時前後まで残業をしている方も多いことがわかる。中には0時近くになる教職員もいる。正確な記録や、指導・検討がされていたとしても、全ての教職員が勤務時間内に業務を終えることは困難であることが伺える。


増える持ち帰り仕事、なお続く長時間勤務

 1週間の時間外勤務の平均は、昨年度に比べるとやや減少傾向にあるが、校内での時間外が23・5時間→21・8時間と減っているのに対し、校外での時間外(持ち帰りなど)が1時間→1・9時間と倍に増えている。ノー残業デーや「8の日」などの啓発により、結果的に持ち帰りの仕事が増加したのではないだろうか。

 健康破壊ライン・過労死ラインを超える職員の割合はほとんど変化していない(健康破壊ライン超24・5%→24・45%、過労死ライン超62・8%→62・15%)。

 

 8割強の教職員が、いつ病気になってもおかしくない状況であることに変わりなく、異常な勤務実態が続いていることが今回の調査でも明らかとなった。

校種別・年代別・性別による働き方の比較

 校種別に見ると、最も時間外勤務が多く、健康破壊ライン・過労死ラインを超えているのが中学校である。小学校、高校と続く。これは14年間の調査でも毎回同じ結果となる。

 

 小・中学校ではほぼ全ての教員が担任を持ち、空き時間が無い状況である。さらに中学校では部活動指導も重なり、非常に厳しい状況となっている。

 年代別の傾向も、若い世代ほど厳しい状況である。新しい環境や仕事に慣れていないことも大きな原因であると思われるが、初任研、6年目研、10年目研などの研修が若い時期に重なることも負担に拍車をかけている。さらに「教育実践論文」など、本来の業務ではないことを若いからと任される傾向があることが、アンケートに寄せられた声から分かる。

 男女別では、女性の方が比較的時間外が少ない傾向にあるが、これは子育てや家事などが依然として女性の負担として大きく、早く帰らねばならない状況があるのではないかと推測される。男性についても、相対的に負担の大きな分掌を任される傾向にあるのではないだろうか。いずれにしても男女ともに長時間勤務であることに変わりはない。

教員・管理職・常勤講師ともに時間外勤務が多い

 職種別にみると、教諭が最も時間外勤務が多いが、実は勤務時間の把握を一番せねばならない管理職が二番に続く。さらには臨時的任用である常勤講師も約20時間もの時間外勤務をしている異常な事態である。


全ての教職員が同じ意識を持たねば改革は進まない

 グラフ⑤でも分かるように「ノー残業デー」の徹底、会議の短縮、管理職の働きかけなど、多忙化解消に向けて動き出してはいる。一方で一部の職員に仕事が偏ったり、教職員の善意に任せたりする傾向もまだ残っている。大変な事や難しい業務はお互いに助け合い、子どもたちにとって必要なことなのか、削減してもよい業務なのかを見極め、教職員同士で意識を共有し、話し合いながら、私たちの「働き方改革」を進めていく必要がある。

「抜本的解決」は人と予算を増やすこと

 勤務実態調査では時間外勤務の内容も聞いている(左表)。子どもたちのための教育に「手を抜く」ことはできない。しかし、⑤⑩⑪⑫⑭の項目は、今すぐにでも減らすことができるのではないか(表の青い部分)。限られた時間を上手に使う方法を考えたい。管理職によるマネジメント力と、教職員相互の話し合いで、子どもたちや地域に配慮しながら業務を減らしていきたい。

 

 抜本的な解決のためには学校にもっと人と予算を充てることが必要だ。働き方を改善しながら、子どもたちのためにゆきとどいた教育を前進させることが私たちの願いである。