ほんりゅう 作文「楽しかった遠足」(井深)

 今年度は事情があって小学校2校で兼務している。異動したての学校で「遠足」があった。なんと、「おやつあり」の遠足だった。自分の分を持って行こうか迷ったが、前日に買いに行った。全く大人げない話だが、どんなお菓子を持って行こうかウキウキした。すっかり小学生に戻ったような気分だった。ところが当日、子どもたちからのお菓子攻めにあった。いわゆる駄菓子攻撃である。シュワシュワする飴に、口に入れるだけで思わず「すっぱい」と顔が歪む梅肉のお菓子。さらにはシゲキたっぷりのキャンディーなどなど。他の子と交換したり、他の子にあげたりすることが楽しくて仕方がないという感じだった。大声をあげながらはしゃぐ子どもたちの姿があふれていた。翌日、もう一つの学校の同僚にこのことを話すと、「遠足と言えばおやつですよねえ。」と大声で返してくれた。こちらの学校には遠足はないが、懐かしく熱い思いを共有できたことがうれしかった。後日、来年度から遠足がなくなることが決まっていると、子どもたちから聞かされた。学校が変わっていく。子どもたちの「子どもらしさ」を見ることができる大事な大事な時間が奪われていく。「学力向上」を大きく掲げて、いったい子どもたちをどこへ連れて行こうとしているのか。食べきれずに残っていたラムネの1粒を食べながら、つくづく思った。