ほんりゅう 美しく大切なもの (長谷川)

 

 平昌オリンピックが終わった。たとえ表彰台に立つことができなかったとしても、それぞれの選手に苦悩や努力、周囲の支援といったドラマがある。若者の活躍は見ている者の心を躍らせる。私たちが部活動の指導にしばしば熱中するのも、生徒たちの苦悩に寄り添い、努力を応援したい気持ちが高まるからだろう。スポーツに限らず、努力した者は報われて欲しいと願う▼災害・戦乱・貧困・差別・暴力…世界には、努力しても報われないだけでなく、努力する土俵にも立てない人々があまりにも多い。その多くは人が作り出してきたものだ。一方で、何もしなくても地位や金が入ってくる者もいる。そうした者たちがどんなに高価な服をまとい、家に住んでいたとしても、美しいとは思わない▼仮想通貨で一攫千金を夢見る若者が思いのほか多いという。「働けど働けど」といった環境の中で、一縷の望みを抱いているという見方もあるが、「楽して大金を手にする方法がある」という風潮が広がりつつあるのではないかと恐れる。地道に努力を積み重ねることの大切さや、仲間と支えあいながら苦難を乗り越える事の大切さを、私たちは伝え続けたいと思う▼オリンピックの数多くのドラマの中で、自分はスピードスケートの小平奈緒(日)と李相花(韓)両選手の、互いに尊敬し友情を結ぶ姿に、一番心を揺さぶられた。安易に「勝つこと」や「国の威信」を求めがちな風潮に流されず、もっと美しく大切なものがあることを教えてくれた。未来の希望を垣間見た気がする。