ほんりゅう 夜空ノムコウの明日(長谷川)

 先日参列した知人の葬儀は、「無宗教でこぢんまりと」との遺志に反して参列者は多かった。直前まで様々な社会的活動を果たされていた故人にふさわしい惜しまれる死だった。朗読された故人の手紙が、「精一杯生き」「思い残す事はなく」「自分に関わった方に感謝」を伝えていた▼人はすべて死に向かって生きているが、死を意識する事は「どう生きていくか」を考える事である。「自分は何のために生きているのか」を考えるのは人間だけの特権だが、「生きる」の根源は欲と意志であると思う▼教員になりたての頃、「なりたい教師」「やりたい授業」「作りたいつながり」への渇望があった。しかし、解散したSAMPの歌詞ではないが♪すべてが思うほど うまくはいかない♪。迷い・もがいていて♪このまま どこまでも 日々は続いていく♪と感じていた▼年を経て、欲も意志も変わってくる。最後には、地位も名誉も金も関係なくなることがわかっているから、後輩や後世に何かを残してあげたい気持ちがより強くなってくる▼有名な詩「雨ニモマケズ」は、教師経験のある宮沢賢治が、死を意識して残したメモ書きだったが、そこには「他者のために生きたい」との願望を読み取る事ができる▼不安材料が数え上げればきりがないほどある今の時代、♪夜空の向こうの明日♪に「子どもたちが安心して暮らせる未来」や「若い教職員が不安なくのびのびと活動できる環境」を残してあげたいという望みがますます強まっている。