2015年度「勤務実態調査」報告

長時間勤務改善、多忙化解消をめざして

2015年度、11年目を迎えた岐阜県教職員組合連絡会議(以下、組合連)の勤務実態調査は1765人から回答が寄せられた。


その結果は1週間の時間外勤務が全体平均で19・7時間となり(左グラフ)、ここ何年かの結果と比べても大きな変化は見られず、教職員の多忙化は一向に解消されていないことが明らかとなった。特に教諭に限って見れば時間外勤務が21・6時間となり、過労死ライン越えは53%以上となっている。

 

県の「多忙化解消アクションプラン」を実効性のあるものとするため、今回の調査結果をもとに、組合連としても岐阜県教委に対して、多忙化解消を強く求めて行きたい。

際立つ中学校の実態

 中学校での時間外勤務は26・6時間で、過労死ライン越えにいたっては、なんと74%近くになるという異常な結果である。 

 他の校種が大変でないというわけではないのだが、校種ごとに分類すると中学校の時間外勤務が26・6時間と驚くほど突出している(過労死ライン越えが73・9%)。時間外勤務を1時間未満で終わらせる職員が一人もいないということからも、その異常さが際立つ。中学校は他の校種に比べてより負担が大きく、毎年いつ誰が倒れてもおかしくない状況が続いている。

20・30代に偏る多忙化

 年齢別に比較すると、20・30代の時間外勤務が20時間を越え、突出している。過労死ライン越えも半数を越えている実態だ。若いが故に、経験も浅く、通常の業務をこなすことが大変だと推測される。子どもたちのためについつい頑張り、時間が過ぎてしまう傾向があることや、この年代には多くの研修が重なることが負担を大きくしていると推測される。持ち帰り仕事の傾向を見ると、30代以降からその割合が増えている。おそらくは結婚・子育てなどで家庭に仕事を持ち帰らなければならない状況があると思われる。情報管理の徹底等の観点から、持ち帰ることのできる業務が狭められている。今後、より帰宅時刻を遅らせることにならないだろうか。

管理職・常勤講師も深刻

職種ごとに分類すると、圧倒的に多いのは教諭だが、それに続くのが管理職の18・7時間(過労死ライン越え27・8%)である。時間外勤務が5時間未満に該当する管理職が一人もいないということから、管理職にもかなりの業務負担があると考えられる。現場の教職員の業務量を把握し、適正な働き方になるよう、管理・指導する立場の管理職がまず勤務状態を改善しないと、学校現場の多忙化解消はいつまでも実現しないのではと不安になる。


同じく時間外勤務が多いのは養護教諭・常勤講師・実習教諭と続いている。どの職種も多忙には違いないが、この調査は教員採用試験1か月前の時期であり、常勤講師の健康破壊ライン越え(過労死ライン越え含む)が50%以上という現状は、採用試験の勉強時間を確保する上でも、何としても改善させる必要があるだろう。

本来の時間外勤務は「緊急でやむを得ないとき」のみ

時間外勤務の内容で最も多いのが、校内・持ち帰りのどちらも「教材研究、ノート点検、採点・成績処理など」である。そもそも教職員は、「勤務時間の割振り等により、時間外勤務が生じないようにする」とし、「勤務時間外に業務を命ずる時には、超勤4項目に限定」されている。しかも「超勤4項目」を命じられるのは、「臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限る」としているのである。時間外勤務で最も時間を割いている「教材研究」等は、「臨時又は緊急のやむを得ない必要がある」とは言えず、その内容は、「自発的行為として整理せざるをえない(文部科学省)」ため、時間外勤務手当は支給されないのが現実である。

【給特法・給特条例】(文部科学省ホームページより)

 そもそも、教職員は、勤務時間の割振り等により、時間外勤務が生じないようにする必要があり、勤務時間外に業務を命ずる時には、超勤4項目に限定される。

(参考)『超勤4項目』

1 教育職員については、正規の勤務時間の割振りを適正に行い、原則として時間外勤務を命じないものとすること。

2 教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合は、次に掲げる業務に従事する場合であって臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限るものとすること。

イ 校外実習その他生徒の実習に関する業務

ロ 修学旅行その他学校の行事に関する業務

ハ 職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう。)に関する業務

ニ 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務

職場で認知されていない労働安全衛生委員会

今回は県立学校(高校・特別支援学校)の教職員に対し、各職場での労働安全衛生委員会(以下、労安委員会)のアンケートも行った。その結果、「委員会で話し合われた内容」について、「報告されていない」15・23%、「わからない」71・43%、「委員会の定期開催」については、「行われていない」7・69%、「わからない」75・61%となった。ほとんどの職場で労安委員会の内容が知らされず、開催自体も知られていない実態が明らかとなった。労安委員会が開催されることで、職場環境が改善され、働きやすい職場を作ることができる。個人に業務が偏っていないか、大変な働き方をしていないかなどを把握するためにも、各職場ごとにきちんと労安委員会が位置づけられることが求められる。

教育条件整備で多忙化解消を

私たちは11年間、勤務実態調査の活動を続けてきた。岐阜県教委も「多忙化解消アクションプラン」を出し、努力を重ねてきた。しかし、多忙化が改善されてきているとまでは言えない。こうした中、学校によっては「2か月分の会議を一度に行う」「教材や文書を共有し、時間の削減」「朝部活は当番制に」「早く帰る日を決め、『早く帰りましょう』の声かけ、もしくは張り紙」をするなど、工夫をしている実態もある(調査記述欄より)。こうした各学校や教育委員会の指導は大切だが、現場での努力にも限界がある。


教職員が元気に笑顔で子どもたちの前に立つためには、時間的なゆとりが不可欠である。教育予算を大幅に増やし、教職員を増員し、少人数学級を拡充させることが一番の近道ではないだろうか。