ほんりゅう 「ダメなものはダメ」と、声を上げ続けよう(柏瀬)

前号に引き続き、安保法制強行について▼成立直後、首相は「やがて国民の理解は広がる」という趣旨の発言をした。成立させてしまえば関心が薄れ、反安保の国民感情は下火になると高をくくっているように見える。実際、世論調査は内閣支持率がやや回復してきていることを示している。しかし、これは安保だけが国の課題ではないことの表れであって、国民が怒りを忘れた訳ではない▼安保に対する意見はさまざまあるだろう。しかし、憲法違反の疑いが濃い法案を、反対や慎重審議を求める圧倒的多数の声を無視して押し通そうとする不誠実で強引な姿勢に、きな臭さを感じ、この国の未来に不安を抱いたからこそ、あれほど幅広い反対運動がわき起こったのだ。安保反対を公言した芸能人が出演キャンセルを始めとする様々な圧力を受けたという話は、その不安が当たっていたことを物語っている▼先日、テレビドラマ「図書館戦争 ブックオブメモリーズ」を見た。原作は人気作家有川浩さんのベストセラー小説。公序良俗を守るという大義の下、「メディア良化法」を盾に検閲や統制を強める国家権力。「メディア良化隊」の力づくの攻撃に、読書の自由を守るために結成された「図書隊」が立ち向かうというフィクション。その最後の場面で主人公(榮倉奈々)がつぶやく一言が胸に刺さった。「みんなが人任せにしているうちに、こんな国になっちゃった」▼フィクションがフィクションの世界の話でとどまるよう、「ダメなものはダメ」と声を上げ続けよう。