今年になり、小中学校には文部科学省から「私たちの道徳」が配布された。以前の「心のノート」と違って、早く(1月には届いていた)、多く配られているようである。その様子に、「一段と力が入っている」と感じるのは私だけではないだろう。▼反面、学校現場では、大きな混乱を招くことになった。「今までの道徳教育計画との整合性は?」「計画を作り直すのか」「政権が代わったらまた変わるのか」「道徳は近い将来『教科化』するのか」「そもそも、政治がここまで教育内容に干渉してよいのか」と、多くの声が聞こえる。夏休み前には、「家庭に持ち帰らせて、活用を」「学期に○回は使うように」との『指導』もあったようだ。▼私は、ずっと思っている。「教育は、時間も、お金も、手間(人手)もかかるものだ。そして効果が出るまでにも時間がかかるものだ」と。▼国民の道徳性も、全国学力学習状況調査の結果も、高等学校の進学率も…普段の、不断の努力の結果として後からついてくるものではないのか。結果の分析は必要だし、指導のあり方を振り返ることも大切だ。しかし、せめて何十年といった尺度での見通しを忘れてはならないと思う。▼教育の営みは地味でいい。こつこつとしたとりくみが花開くのは10年20年・・・50年先なのかもしれないのだから。