【ニュース】2014年度組合連勤務実態調査・過去最悪の結果に

健康破壊ライン越え約80%、過労死ライン越え約50%

 組合連の勤務実態調査が10年目を迎えた。今年も6月16日(月)~22日(日)を基本期間として行った結果、小・中・高・特支の校種、20~50代まで幅広く回答を得ることができた。今年は10年間の調査の中で時間外勤務・健康破壊ライン越え・過労死ライン越えが最も多いという最悪の結果となった。

持ち帰り仕事が減っているが時間外勤務全体は増えている

校種別の時間外勤務割合(2014年)
校種別の時間外勤務割合(2014年)

 持ち帰り仕事の平均時間は、2006年度から比べると、1.9時間の減になっているが、反面、学校に残っての時間外勤務は3.7時間増となっている。原因としては、情報管理の徹底がなされるようになったことが考えられる。「パソコンデータの持ち帰りをもう少し緩くしてほしい」という記述回答があったが、なかなか難しいことでもあろう。「成績処理の簡略化を」という声と合わせて、生徒の個人情報に関わる業務の整理が求められるのではないだろうか。採点も持ち帰りにくい状況である。「テストや成績をつける時期に部活をなくすなど時間に余裕をつくる」という声にも耳を傾けたい。

 また、時間外勤務1時間未満の割合が、2009年度で、4.19%だったものが、1.44%にまで、落ち込んでいることが気になる。この減少傾向は2012年度から見られる特徴であり、子育て世代にはたいへん苦しい状況に置かれているのではないだろうか。同じく、2012年度から見られる特徴として、減少気味であった週20時間以上の「過労死ライン越え」の割合が増加してきている。これも、持ち帰りが禁じられている業務の影響であろう。個人情報に関わる、主にパソコンを使って処理している業務についての整理が必要だと思われる。「PCの仕事が多すぎて振り回されている現状を改善して欲しい」「授業や教材研究にあてる時間より、文書処理や作成にあてる時間が多い。また、変更や、処理と実動の差があり、業務のやりにくさを感じる」という記述回答があった。「書類の簡素化」を望む回答は多い。

若い世代に負担が偏る部活動記述に寄せられる会議の効率化

年代別の時間外勤務割合(2014年)
年代別の時間外勤務割合(2014年)

 週20時間以上の長時間の時間外勤務は、特に20代、30代に目立つ。おそらく、部活動を主顧問かどうか問わず、生徒に付き添っていることを求められることが、40代、50代との差に表れているのだろう。若い世代ほど、経験のとぼしい部活動に配置される割合も高いと思われる。担当する部活動の特性や指導方法を学ばなければならないという点でも、時間を必要とするだけでなく、ストレスを抱えることにもつながる。「専門コーチ、指導者をより多く活用する」「部活指導を教師がやる体制を変えない限り中学校の多忙化は永久に改善されない」などの記述回答が寄せられた。「時間外に活動する時は教員の身分をはずす」という声もあった。部活動の指導については、教員としての身分保障が十分でないことは大きな問題である。今や、「生徒の自主的活動に顧問がアドバイザーとしてつく」という形態ではない。しかしながら、時間外勤務の内容の7.12%が部活動と答えているのだが、削減できる時間外勤務として部活動をあげる声は、4.92%である。教職員として生徒に直接関わる活動については、前向きな気持ちが働くのだろう。教材研究などについても同様である。

 一方、会議については、時間外勤務の内容割合で、4.47%のところ、削減できると思うものの割合では、22.04%になっている。会議の回数、内容、時間帯については、多くの記述回答が寄せられている。不必要な復唱や、文書を読み上げるだけの話、管理職の話が長いなどを、改善して欲しいとの声が寄せられる一方、そもそも無理な時間帯、無理な回数になっている様子もうかがえる。「会議は勤務時間内に始めて、勤務時間内に終わる」「諸会議の日は5時間授業とし、16時40分までに終わる」という声もあった。会議などなくして、文書連絡で済ませばよいというような声もあったが、多くの教職員が会議に疲弊しているということなのだろう。「会議で徹底した共通理解が必要な所のみ時間をかける」という声もあった。会議のあり方の改善が求められている。

一人ひとりの悩み・思いに応える研修内容・体制づくりを

 明らかに増えているのは、研修、研究指定に関わる業務の時間である。組合の県教委交渉では、研修や研究発表に関わる提出書類等の準備の軽減を求め、それなりの回答を得ているのだが、各校でそれが反映されていないのではないかと思われる。競争原理や前例主義が働くのかもしれないが、教職員にとっては、本当に児童生徒のためになっている業務とは思えない実態があるのだろう。「すばらしい指導案作成のため、時間がかかる。指導者に指導してもらい、直す。学年全体でためしの授業等を行い、職員はイライラし、雰囲気が悪くなる」「たかが数分間の訪問(各クラスの訪問)のために、たとえA4半分にしても書かせる必要はない。課長訪問の時の懇談資料はほとんど使われないので無しにする」「本当に意味のあることに限って研究する。そのための職員の加配をする」などの記述回答が寄せられた。教委、管理職の先生方には、ぜひ考えてみていただきたいことだ。

教育予算を増額し、教職員増を

 マスコミで学校や教職員の事件がしばしば取り上げられ、教委や管理職の先生からは、世間からの風当たりの強さが伝えられる。その一方で、たいへんストレスが多く、勤務時間が長いことが、世間的にも知られるようになってきた。「職員数が減少傾向にあり、1人あたりの負担が増えているため人手を増やして欲しいです」「管理当番を外部委託して欲しい(警備員)。学年会計処理をする事務員が必要。不要な業務をなくす」「仕事内容を簡潔にする。必要な業務が無理なくこなせるだけの職員数になるように雇用を広げる」これらは、至極もっともな要求だろう。

 子どもたちの前に教職員が元気に笑顔で立てるように、各学校、教委の真剣な対応とともに、教職員を増員するための教育予算の増額が必要である。