2014年人事院勧告について全教が声明を発表

2014年人事院勧告について(声明)

2014年8月7日

全日本教職員組合 中央執行委員会

 

1.人事院は本日 、一般職国家公務員の給与等に関する勧告と報告を内閣総理大臣と両院議長に対しておこないました。

今回の人事院勧告は本年の給与改定にかかわる勧告に加え、公務労働者に対する「給与制度の総合的見直し」という単年度にとどまらない制度変更をともなう勧告となりました。すべての世代にわたって生涯賃金の大幅削減をもたらす「給与制度の総合的見直し」の人事院勧告は、政府の要請を受けたものであり、公務労働者の労働基本権制約の代償機関を自認してきた人事院の自己否定に他なりません。全教は強く抗議の意思を表明するものです。

 

2.人事院は今年4 月における官民較差について、国家公務員給与が民間給与を「平均1,090円、0.27%」下回っていたとしています。そして、民間賃金調査結果にもとづき、行政職給料表(一)を平均0.3%引き上げるとともに、一時金を0.15 月引き上げ4.10 月とし、引き上げ分をすべて勤勉手当に充当するとしました。また、初任給の引き上げと交通用具使用者にかかる通勤手当の若干の改善を求める一方で、寒冷地手当の支給地域の見直しを打ち出しました。

 

3.今年度から「雇用と年金の接続」のために新たな再任用制度がスタートしたことにかかわり、人事院は報告で民間給与が公務を「僅かに下回っている」としたにもかかわらず、給与改定を見送り、「意見の申出を踏まえ、雇用と年金の接続のため、適切な制度が整備されるよう、積極的に取り組む」としながらも単身赴任手当の支給にとどめ、「諸手当の取り扱いを含め、再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行っていく」としました。

 

4.今年の人事院勧告の焦点となった「給与制度の総合的見直し」について、給料表の水準を平均2%引き下げること、1 級の全号俸と2 級の初任給に係る号俸については引き下げない一方で、高齢層職員をねらいうちにした3 級以上の高位号俸については最大で4%程度引き下げるとしました。また、地域手当については、級地区分を現在の6 区分から7 区分に拡大し、その最大(1級地・東京23 区)を20%とし、地域間格差をさらに広げるものとなりました。さらに、管理職に適用される行政職(一)の5 級と6 級の号俸足延ばし、管理職員特別勤務手当を平日にも拡大し上限を6000 円とすること、「本府省における若手職員の人材確保」を口実に、「係長級及び係員級」に対する本府省業務調整手当を2%引き上げるとしました。人事院は、昨年の報告で行政職(二)の給与引き下げを打ち出していましたが、今年の報告では「給与水準の指標となる具体的な数値を得ることは困難」として、見送りました。また、寒冷地手当について、気象庁の新たな気象データの提供を口実に支給地域の見直しを行い、寒冷地における生活実態を無視した切り下げを強行したことは断じて認めるわけにはいきません。

 

5.全教は「すべての労働者の賃上げ景気回復と地域経済の復活を」をかかげ、消費税増税反対、最低賃金1,000 円以上への引き上げ、社会保障制度の改悪反対など、官民共同のたたかいを追求し、夏季闘争をたたかいました。同時に、人事院による「給与制度の総合的見直し」に対しても、その背景には安倍政権と財界の強い要請があることを明らかにし、全労連公務部会に結集してたたかいました。その結果、全国の職場・地域からの共同を広げ、自治体当局や地元選出国会議員への要請、宣伝行動など多彩なとりくみが展開されました。

具体的なとりくみでは、各県における自治体当局や教育委員会、人事委員会への要請・懇談、地方人事院事務局に対する要請・交渉や包囲行動が公務産別の共同行動として展開されました。また、全教は人事院総裁に向けて賃金改善を要求する職場要求署名64,858 筆(公務労組連絡会全体では189,781 筆)を提出するとともに、7 月11 日に行われた人事院への個人請願行動には全国から887 名分の要請書が寄せられました。7・25中央行動は「えがお署名」提出行動を組み込み、全国から約500 名の参加で成功させることができました。さらに、首都圏を中心に全国の構成組織から3日間で約100 名が参加した人事院前の座り込み行動など、職場・教職員の積極的な立ち上がりを背景にしたとりくみも前進しました。そのようなたたかいが、0.15 月分の一時金引き上げ、初任給をはじめとした若年層に重点をおいた給料表の改定、時限が区切られているとはいえ3 年間の現給保障、交通用具使用者の通勤手当の引き上げ、年度内実施が目論まれていた平均2%の給料表の引き下げを来年度に先送りさせたことなど、不満は残るものの給与改善を含む措置として結実させることができました。

 

6.給与制度の総合的見直しは、安倍政権がめざす国および地方における公務労働者の総人件費削減という要請をうけ、同時に人事院が自らの生き残りをかけて打ち出したものにほかなりません。今年の人事院勧告が実施されれば、地域手当の較差は最大で20%となり、職務給原則は完全に投げ捨てられます。また、この間の公務員給与の引き下げや消費税増税による実質賃金の低下にも配意することなく、生計費原則は一切考慮されていません。全国津々浦々で地域住民と直接かかわり、教育や公務・公共サービスに尽力している公務労働者に目を向け、その待遇改善をめざす勧告とはなっていないことが根本的な問題です。そのことが、教職員のモチベーションの低下を招くことも懸念されます。政府・人事院に対して、あらためて正規・非正規を問わず教育と公務・公共サービスの最前線に立つ公務労働者の賃金・労働条件の改善を強く求めるものです。

 

7.教員給与を含め地方確定闘争では、教職員をはじめすべての公務労働者の生活改善につながる賃金引上げ、すべての世代における賃金改善、臨時教職員の待遇改善を基本要求にかかげ、たたかいをすすめることが、官と民・世代・雇用形態の違いによる政府・財界の分断攻撃を許さず、要求前進をはかるうえでの重要な課題となります。また、通常国会で強行された地方公務員法の改悪により人事評価結果と賃金・処遇をリンクさせることや文科省が打ち出している「メリハリある教職員給与」などの攻撃を押し返すたたかいに力をつくすことが求められます。全教は、子どもたちの教育を守るために生活の不安なしに教育に専念できる教職員の待遇改善を求め、文科省と地方教育委員会に引き続き改善を求めていくものです。

 

 

8.全教は、あらためて政府に対し、生計費にもとづく賃金改善をおこなうことで、公務員労働者はもちろんのこと、すべての労働者の賃金底上げに積極的な役割を果たすことを強く要求し、その実現のために民間労働組合や民主団体との共同のたたかいをさらにすすめます。同時に、憲法と教育、国民のいのちと暮らしを守るたたかいと結合し、労働基本権の全面回復、教職員賃金水準の確保と均等待遇の実現、地域格差拡大反対、教職員諸手当の見直し改悪反対、差別賃金制度の導入阻止のため、全力でたたかう決意を表明します。

 

以上