【談話】地方教育行政の組織及び運営に関する法律「改正」案の衆議院文部科学委員会での採決強行にあたって

子どもたちを際限のない競争に追いやり、「戦争する国」の人材づくりをすすめる地方教育行政法の採決強行に満身の怒りをこめて抗議する


2014 年5月16日
全日本教職員組合(全教)
書記長 今谷 賢二

 

1.与党は、本日15 時すぎ、衆議院文部科学委員会において、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下、地方教育行政法)「改正」案の採決を強行し、自民、公明、生活の賛成で可決しました。可決された「改正」案は、国や首長による教育への政治支配を強化し、子どもたちを際限のない競争に追いやり、「戦争する国」の人材づくりをすすめるものであり、採択強行に満身の怒りを込めて抗議するものです。

2.この間の法案審議を通じて、この「改正」案の問題点がいっそう明らかとなりました。それは、第1 に、政府が今回の「改正」案の根拠としてきた「教育委員会が形骸化している」「責任の所在が不明確」について、審議を通じてそもそも成り立たない議論であることが明らかとなりました。委員会で意見陳述した参考人の多くが教育委員会の現状やそれぞれの努力について言及し、下村文科大臣自らが「多くの教育委員会が現行の制度でうまくいっている」と答弁せざるを得ませんでした。
さらに、「責任の所在が、今回の『改正』で変化はあるのか」と問われた下村文科大臣は、「これまでと変わらない」と答弁しています。「改正案」の前提が崩れてしまったのです。

3.第2 に、首長による政治介入の危険性がこれまで以上に強まり、しかもその内容は時の政権の意向が色濃く反映することが明らかにされました。首長の権限とされた「大綱」の策定や新たに設置される総合教育会議において、学校の設置や統廃合、教科書、人事など教育委員会の権限に属することもその対象であり、教育課程や教育内容についても「(議論することを)妨げるものでない」と答弁されています。教育の自主性を侵し、教育に対する不当な支配を合理化する危険性は、ますます強まったと言わなければなりません。

4.第3 に、国による教育への介入や統制がいっそう強化されることが明らかとなりました。首長が定める「大綱」は、国の教育振興基本計画を「参酌」して策定することとされ、しかも、すべての自治体での策定義務を課しています。下村文科大臣は、こうしたしくみをつくることによって、「土曜授業が加速度的にすすむ」と答弁し、政府や首長の思惑を教育に押しつけ、教育を政治利用することを隠そうともしませんでした。

5.安倍内閣は、秘密保護法や集団的自衛権行使容認への暴走、介護・医療の大改悪、地方公務員への評価制度の押しつけなどをすすめ「戦争する国づくり」「世界で一番企業が活動しやすい国づくり」をすすめています。今回の「改正」は、こうした国づくりを担う「人材」の育成をすすめるために教育そのものへの支配を強めようとするものです。戦後、子どもたちの人格形成に関わる教育を、政治家が政治目的のために支配し、利用することができないように、教育委員会は国からも首長からも独立した制度として確立されました。こうした理念を投げ捨てる今回の「改正」案は、廃案にするしかありません。

6.全国の父母・国民、教職員のみなさん。全教は、あらためて、教育を政治利用しようとする地方教育行政法の「改正」に反対することを表明するとともに、共同のとりくみを強化し、廃案に向け署名、宣伝、懇談などを広げることを呼びかけます。全教は、子どもの成長と発達に心を寄せるすべての人の知恵と力を集めて、「改正案」の廃案をめざす運動をすすめる決意です。


以 上