ほんりゅう ずっと教え子だよ! - 岩田

 30数年小学校の教師をしてきた。高学年を持つことが多く、成人式に呼ばれることもあった。しかし、「小学校の担任では、記憶や思い出になることはそんなに多くはないだろう。中学校や、高校の先生がうらやましい」と思うことは何度もあった。しかし、卒業生には、「卒業しても、ずっと教え子だよ」と伝えてきた。

 先日、20年ほど前の教え子から突然電話があった。1時間ほど話を聞いた。彼女は、「覚えていてくれて、うれしい」と言いながら小・中・高校時代の話や病気の話をひとしきりした。思い出話も恨み節も含めて……。わたしは、うれしかった反面、〝若気の至り〟の後悔するようなところも指摘された。12年の学校生活、担任の中でわたしを指名してもらえたというのは光栄だ。しかし、力になれそうなことは少ない。経済的なしんどさ、家庭環境、学校の体制、病気、社会の支援の少なさなど、彼女の〝今〟を解決するには問題が複雑すぎる。それでも、力になりたいと思うのは教師としての性か。今回のように困難を抱え、SOSを発信してくる子がいる。青年、子どもたちをめぐる状況は厳しい。

 11月27日、高校無償化が廃止され、4月からは授業料が徴収されることになった。世帯所得が低い家庭には、「就学支援金」なるものを給付して援助するという。浅ましい施策だ。こんな情勢に風穴を開けるためにも、彼女のような教え子を応援するためにも、そして、よりよい社会の実現のためにも歩みを止めるわけにはいかない。