【2013年度勤務実態調査】ますます深刻な状況に!

過労死ライン超え過去最高47.25%

 毎年、組合連が行う「勤務実態調査」に、今年も信じがたいデータが集計されました。 小中学校では「多忙化解消アクションプラン」が実施され、適正な勤務に近づいているのではと期待をしていましたが、2003年の調査開始以来、過労死ライン超えが過去最高を記録する異常な状態となっています。教職員が健康で働ける学校をつくることは、子どもたちの教育環境改善にもつながります。皆で考え、できることから早期に実行しましょう。


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2013年度勤務実態調査集計表
学校種別・性別・年代別などで比較した集計表です。
2013【組合連・分析用】勤務実態調査集計用紙.pdf
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【小・中学校】ますます深刻な事態に!健康破壊ライン超え過去最悪

 小学校では、健康破壊ライン超えは87%以上、そのうち過労死ライン超えは51%以上となっています。中学校はさらに深刻で、健康破壊ライン超えが93%以上、そのうち過労死ライン超えは71%以上となっています。この値は、過去の調査の中でも最高値となっています。 中学校では生徒の下校時刻も遅く、部活指導や会議が終わってからでないと個人の仕事にとりかかれません。小学校では、担任はほぼ全教科を指導するため、その教材研究や準備に多くの時間を費やしています。特に高学年は教科数も多く、英語も導入されたこともあり、教材研究や準備、また学習後のノート点検など、作業量は膨大です。例えば、ある学校の高学年担当の若い先生は、翌日の授業の板書計画などの準備をしてから帰宅するため、深夜になることがほとんど毎日で、さらに、土曜日か日曜日のどちらかは勤務という状況です。 「夜遅くまではできないから朝早く出勤している」「小さな子どもがいるから持ち帰り仕事を多くしている」など、個人によって違いますが、状況はますます深刻になってきています。

勤務時間の記録はなんのため? ~自己管理能力を高める?~

 小中学校では、勤務時間の記録がなされるようになって数年たちますが、今年度の調査では、78%の方が毎日勤務時間の記録をしており、ときどきしている方も合わせると90%になります(右下表参照)。 県教委は勤務時間管理の目的について「①教職員の自己管理能力を高めること」「②管理職の客観的な実態把握と指導」の二つの側面があると述べています(「団体交渉」回答より)。しかし、過労死ラインを50%(小)、さらには70%(中)も超えるような状態にあるのは「自己管理能力」が高まっていないからなのでしょうか。疲れ切っているけれど、子どもを目の前にしてやらなければいけないことがある、早く帰りたくても帰れないくらい仕事が多い…。それが、実際です。 県教委は、校長会、教頭会、学校訪問を通じて長時間勤務や時間外勤務の是正について管理職への指導を継続していくとしていますが、県教委が推進している多忙化解消アクションプランが実行されているかというと、「いいえ」の答えが80%以上になっています。 また、業務のスリム化はある程度必要ですが、一人ひとりの子どもたちにゆきとどいた教育を進めるためには、何よりも正規教職員の大幅な増員が必要であることが、今回の調査に設けた記述欄に、多くの方が記載されていました。

【高校・特支】学校での時間外勤務、過去最長 国体終わっても過酷な勤務の実態

 昨年度、高校では国体の影響もあったのか、1週間の時間外勤務は17時間をはるかに超える異常事態となりました。しかし、本年度の調査で高校を見ると、時間外勤務時間も健康破壊ライン超えの割合も増え、過去最高の値を更新しています。 さらに、大きな問題が今回の調査でわかりました。家庭への持ち帰り仕事が減っているのに対し、学校内の時間外勤務は逆に増えているのです(1面グラフ参照)。職員が学校現場にとどまる時間は過去最長となり、学校は不夜城と化しています。 このように、学校に拘束される時間が長くなったのは情報管理の厳しさからでしょう。USBメモリによるデータの持ち帰りができなくなり、パソコンを使う仕事は事実上全て学校で済ませざるを得なくなりました。様々な仕事を全て学校で済ませ、精根尽き果て帰宅。自宅でくつろぐ時間もなく寝るだけ。小中学校とと比べれば、数字上は時間外勤務が少ないとはいえ、健康破壊ライン超えの職員の割合は70%。もう限界ではないでしょうか。

健康破壊ライン超えが42%…… 特別支援学校

 特別支援学校では、健康破壊ライン超えが42%以上。年々増加傾向にあります。数値的に、他の校種より少ないとは言え、良好な勤務状態にあるとはとても言えません。 「形式的に昼休憩があるとは言え、子どもから離れられない特別支援学校では実質無意味」、「多くの生徒数で安全面も不安、今は我々が頑張って職場を支えている、適切な人員配置でより充実した支援のできる環境を」(要旨)、等の声にあるように、教育の充実に向けての、正規教職員の増員、時間外勤務の解消は喫緊の課題になっています。

待ったなし 業務の見直しと大幅増員

 小・中学校では昨年度より「多忙化解消アクションプラン」が行われ、学校全体で定期的に勤務実態の把握がされています。ただし、これが業務の見直しや、実際の時間外勤務の解消に今のところつながっていないことが問題です。一方、高校の現場では、「多忙化解消アクションプラン」は行われていません。 「管理職は職員の仕事量・内容のマネジメントを真剣に行うべきだ。そのためにも、勤務時間記録と簡易な勤務内容報告を全員がつけ、毎日管理職に提出。管理職は仕事の偏り、時間・内容をチェックし調整すべきだ。一度全業務を洗い出し、そのマンパワーを計算する必要がある」 これは、本年度の調査記述欄に書かれた意見です。管理職が、学校経営者として当たり前のことをしてほしいとの願いです。 徹底した現状の把握。具体的に何が余分で何が足りないのか。学校組織を無理なく運営するために必要なことは何か。 個々の職員のがんばりに頼るやり方はもう限界です。子どもと向き合う時間を保障するため、大幅な業務の見直し・削減と正規教員の大幅増員が不可欠です。