この春、地元の高校に転勤した。地元に住む者としての評価は、「困難を抱えることも多いが、最近は結構落ち着いている地域の高校」というところだった。現に、この春も、小中と不登校気味で苦労していた知り合いのお子さんが、親の心配をよそに元気に卒業している。入学式の準備で、係にあたった生徒たちが自分からすすんで動いているのには感心した。掃除の時間、制服姿の女の子に階段のぞうきんがけをやらせるのは悪いと思って自分でやっていたら、「私がやります」とすすんで言ってくれた。どれも当たり前なのかも知れないが、忘れていた感覚だった。▼もちろん、いい話ばかりではない。昨日は、保健室に駆け込んだ生徒から、家庭のことに関して1時間以上相談を受けた。放課後、知り合いから譲ってもらった、6年目になる制服の上着で就職試験に行かなくてはならないのではないかと心配している女の子がいて、「9月のうちは制服の上着はいらないから……」と声をかけた。進路ガイダンスでは、学費が出せるかどうかがまず確認される。▼世の中、アベノミクスの高揚感に湧き、「ボーナス好調ー過去2番目の伸び」などという見出しが新聞に躍っているが、末端まで届くのはいつのことやら。おまけに、海外で活躍できる優秀な人材を育成することばかりに気を取られた「教育改革」が進みそうな情勢だ。▼そんな中でもがんばって高校生活を送っている生徒が目の前にいる。この子たちを泣かせないために、そして満足して高校を卒業していってくれるよう、教育に、そして教育運動に打ち込んでいきたいと思ってやまない。