ほんりゅう 60秒サービス - 村上

 京都で下宿生活をしている息子が、サークルの合宿や遠征の費用をまかなうため、近々ハンバーガーショップでアルバイトを始めるという。私のスネがこれ以上細くならずに済むことを期待する。
 さて、年末から(息子のバイト先ではない)大手ハンバーガーチェーン店のCMを耳にする。会計終了から60秒以内で商品を提供できなかったら、ハンバーガーの無料券を出すのだという。名づけて〝ENJOY!60秒サービス〟。1分ではなく、60秒という方が、時間の短さが強調されるらしい。
 このハンバーガーチェーンといえば、かつて超過密労働を強いられた「名ばかり店長」が、訴訟を起こしたことが記憶に残る。「またか!」と、私は背筋が寒くなる思いがしている。専用の砂時計が置かれた現場は、すさまじい効率化に追い立てられているのではないだろうか。60秒という時間にどれほどの意味があるのかわからない。しかし、そのためにそこで働く人たちの人間性が尊重されていないだろうことは想像に難くない。こういうことに何の疑問をもたず、サービスを受け入れてしまう社会でよいのだろうか。
 息子にはアルバイトを通して、働いてお金を得るとこの意味はもちろんのこと、社会の現実についても、少しは学んでほしいと願っている。