大問題!「1年単位の変形労働時間制」

【5】厚労省通知・指針違反である

「1年単位の変形労働時間制」導入の際に、厚労省は通知・指針を出しています。それによると、「1年単位の変形労働時間制」が認められるのは、1か月を超えて1年以内の一定の期間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間を超えない仕事であり、週の労働時間をあらかじめ定められない業務については適用する余地はないとしています。

 

突発的な業務…予測できないのが教員の仕事

子ども・生徒への突発的な指導があったり、予定外の会議や業務をおこなう必要が生じたり、いつ時間外、長時間の業務を強いられるか分からない状況にあるのが学校です。あらかじめ労働時間を定め、定時に絶対帰れるという保証がない教員に対して「1年単位の変形労働時間制」導入は、厚労省通知・指針違反です。だから文科省は、地公法第58条を「読み替え」られるように給特法第5条「改正」を狙っているのです。そして地公法第58条というのは、労働基準法第32条の4(1年単位の変形労働時間制)を地方公務員には適用しないと規定されています。これを、またまた「読み替え」させ、教員だけに適用しようとしているのです。(関心と時間があれば、給特法改正案、地方公務員法、労働基準法の3つを並べて解読してください。難解すぎて、筆者はかなり手を焼きました。)

 

人類の歴史を後退させる「一年単位の変形労働制」

1日8時間労働は、大げさに言えば人類の歴史の到達点です。「1年単位の変形労働時間制」は、それを後退させるような働き方であるがゆえに、労使ともに合意し、協定を結び、労働基準監督署に届け出ることになっています。

 

ところが政府は、労使協定ではなく、地方自治体で条例を制定すれば公立学校に「1年単位の変形労働時間制」を導入できるようにしようとしているのです。これは、労基法の「労使対等決定原則」に反し、労働者保護の観点からも許されるものではありません。公立学校の教員に労使対等の交渉で労働時間を決める権利を保障しないのであれば(それ自体が、きわめて不当なことですが)、その代償として、むしろ法や条例で超過勤務を明確に禁じるべきです。それなのに、真逆の超過勤務を認める条例を制定させようとするなど言語道断です。


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