【賃金】2011年人事院勧告について

人事院は本日9月30日、内閣と国会に対して一般職国家公務員の給与等の勧告と報告をおこないました。

これにともない、全教は「2011年人事院勧告について(声明)」を発表しました。声明全文は後述。

 

■人事院勧告ホームページはこちら

http://www.jinji.go.jp/kankoku/h23/h23_top.htm

 

●勧告要旨

・賃金:民間との較差が「マイナス0.23%(899 円)」であったとして、「40 歳台以上を念頭においた」俸給月額を最高で0.5%引下げる改定

・一時金:今年は東日本大震災のため東北3県を除く民間の支給割合は3.99月(3.987月)で、本来なら「7捨8入(2捨3入)」の原則により4.0月に引き上げるべきであるにもかかわらず、「東北3県の今夏の特別給の状況は厳しいとみられることから、特別給の改定を行うべきと判断するに至らず」として、改定を見送り

2011年9月30日

2011年人事院勧告について(声明)

全日本教職員組合 中央執行委員会

 

1.人事院は本日9 月30 日、内閣と国会に対して一般職国家公務員の給与等の勧告と報告をおこないました。

賃金に関しては、民間との較差が「マイナス0.23%(899 円)」であったとして、「40 歳台以上を念頭においた」俸給月額を最高で0.5%引下げる改定に踏み切りました。また、一時金については、今年は東日本大震災のため東北3 県を除く民間の支給割合は3.99 月(3.987 月)で、本来なら「7 捨8 入(2 捨3 入)」の原則により4.0 月に引き上げるべきであるにもかかわらず、「東北3 県の今夏の特別給の状況は厳しいとみられることから、特別給の改定を行うべきと判断するに至らず」として、改定を見送りました。さらに、05 年勧告で最高7.0%の俸給引き下げなどを内容とする「給与構造の見直し」のもとで措置されてきていた「現給保障」を2 年かけて2013 年度から廃止することを盛り込みました。昨年の勧告で盛り込まれた55 歳を超える者であってかつ行政職(一)6 級以上の職員の賃金を1.5%一律削減する法律も引き続き適用されます。勧告が実施された場合、年間で平均1.5 万円の賃下げとなります。この間の主に50 歳台を狙い撃ちにした賃下げ攻撃による高齢層の公務労働者の生活破壊は深刻です。高齢層の賃金抑制・賃下げは公務労働者全体の賃金を低く抑え込む重石の役割を持たせる攻撃です。地域での給与水準において「標準性」を持っている公務員賃金の水準引き下げは、全国の公務員だけでなく、民間労働者や地域経済にも大きな影響を与えるものです。

 

2.全教は「賃上げでこそ景気回復を」「貧困と格差の拡大から、労働者・国民の生活を守ろう」と呼びかけ、東日本大震災からの復旧・復興支援や最低賃金の引き上げを求めるとりくみなど官民共同のたたかいとも結合して、夏季闘争をたたかいました。とりわけ、人事院が春闘期から、現給保障の見直しの検討を表明して以来、全教は公務労組連絡会に結集し、現給保障の廃止反対を求め、政府と人事院に対して組合との誠意ある協議・交渉を迫り、とりくみを強化してきました。政府に対しては公務・公共サービスの充実を求める署名35,949 筆、人事院に向けては文科省の概算要求にむけた「えがお署名」提出行動を組み込んですすめた526 名の参加による8・30中央行動、全国の構成組織から約100 名が参加した最終盤における9・14人事院前要求行動およびその行動と呼応した2,000 枚を超えるジャンボハガキ、600 枚を超える職場決議の集中など、職場・教職員の積極的な立ち上がりを背景にしたとりくみを展開しました。交渉では、職場における高齢層の果たしている役割を具体的に指摘し、特定年齢層を対象にした賃金削減をすすめようとする人事院の姿勢をきびしく追及しました。また、人事院が定年制の延長に係わる意見の申出において、60 歳超の給料を年収ベースで7 割としようとしていることについても、同じ職務であるにも関わらず、60歳を超えれば大幅ダウンとなることの不当性をきびしく追及しました。そして、労働基本権が制約

されている中で、人事院がその代償機関としての役割を発揮することを強く求めてきました。

 

3.わたしたちのこのようなたたかいが、人事院が当初、機械的に級毎に定額としていた60 歳超の給与水準を個々の給与に応じて一定割合(73%)で算定する方式に変更させたことに見られるように、わずかとはいえ押し戻す力になりました。また、勧告では現給保障の廃止によって生まれる原資をもとに、給与構造の見直し措置の期間に昇給抑制を受けた回数を上限として、2012 年4 月に民間労働者より低い水準にある36 歳未満(2012 年4 月1 日現在)の者に最大2 号俸、36 歳以上42 歳未満の者に最大1 号俸上位に調整することとしました。また、2013 年4 月に「経過措置額の状況等をふまえ人事院規則で定める年齢に満たない者について最大1 号俸上位に調整する」としました。

これらのことは、若年層を中心とする改善といえます。同時に、初任給の引き上げをはじめ全体の公務労働者の底上げをはかる賃金改善こそが求められます。当面、昇給抑制を受けた者すべてを対象とした復元を求めるものです。

 

4.人事院は勧告と同時に、定年制の延長にかかわる意見の申出を行いました。しかし、民間の再雇用とは異なり、同じ職務を続ける定年延長であるにもかかわらず、60 歳を超える公務労働者の年間給与を60 歳前の7 割とするなど、極めて不当な内容を含んでいます。全教は、賃金の引き下げを伴わない定年年齢の延長や60 歳を超える教職員を定数外とすること、大幅な定数改善、介護休暇や病気休暇制度の改善、多様な働き方の選択の保障を求め、引き続きたたかいすすめるものです。

5.給与構造改革が完結したもとで、人事評価結果を賃金などの処遇に反映させようとする攻撃も現れてきています。私たちは、CEART第4次勧告が「昇給とボーナスに関わる業績評価制度の今後の設計と実施を、教員を代表するすべての教員団体との誠実な協議と合意のもとでおこなうよう、すぐに措置を講じるべきである」としたことにもとづいて、文科省と地方教育委員会に引き続き改善を求めていくものです。

 

6.人事院は報告で、政府が国公労連、自治労連、全教との合意もないままに、今年の通常国会に提出を強行した「国家公務員の給与の臨時特例に関する法律案」(給与臨時特例法案)についての考え方を示しました。その中で人事院は「この法案のように、3か年度にわたり、本院の給与勧告を離れて、現行の給与水準よりも最大10%低い額を支給することには、……国家公務員法の趣旨に照らし問題があると考える」と指摘しています。このことは、わたしたちが政府による憲法と国家公務員法違反の法案提出の不当性をきびしく追及し、人事院の姿勢を正してきたとりくみの反映です。

全教は、あらためて政府に対し、国家公務員の賃金1 割削減を主な内容とする給与臨時特例法案の撤回を求めるものです。

 

7.全教は、今後公務労働者の労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告という役割を踏まえ、公務労働者の生活向上につながる賃金改善をおこなうために、人事院勧告の取り扱いについて、労使での交渉・協議を尽くすよう強く求めるものです。そして、公務労働者はもちろんのこと、すべての労働者の賃金底上げに積極的な役割を果たすことを強く要求し、その実現のために民間労働組合や民主団体との共同のたたかいと地方確定闘争を一体にすすめていくものです。

同時に、憲法と教育、国民のいのちと暮らしを守るたたかいと結合し、基本的人権である労働基本権の全面回復、教職員賃金水準の確保と均等待遇の実現、地域格差拡大反対、差別賃金制度の導入阻止のため、全力でたたかう決意を表明します。

以上